生気象学会(熱中症対策)

柴田です

生気象学会に参加しました。

松原先生が書かれましたが,この学会では気象が人に与える健康リスクと捉えて「熱中症」関連の発表も多いのが特徴です。

今回も暑熱環境やWBGTのキーワードを含めると21件の演題がありました。

その中で,労働安全衛生総合研究所の澤田先生の「酷暑作業後の身体冷却手技再考;アイスパックによる頸部,腋窩部,鼠径部の局所冷却は有効か?」の発表はこれまでの熱中症対策で熱中症にかかった恐れがある場合の対処方法を根底から覆すものとなっています。

これまで,熱中症を発症した人には初期的な対処として,頸部,腋窩部,鼠径部などを冷却することが推奨されてきました。しかし,この方法は有効でないばかりか,かえって体温の上昇につながる。

有効な方法は「温水をスプレーして扇風機や団扇などで風を送ることだ」というものでした。

37℃40%Rhの環境で,(1)温水スプレーに扇風機,(2)氷水パックを左右の頸部,腋窩部,鼠径部にあてる,(3)(1),(2)の併用,と何もしないコントロール群で実験して検証した結果,(1)が最も直腸温度が低下し,(2)は直腸温度の低下は見られず,何もしないよりと有意差がなかった。とのこと。

温水スプレーに送風することで,発汗による蒸発と同様のメカニズムで皮膚温度は低下します。脱水により汗も出なくなっている皮膚に汗の代わりに温水をスプレーし,風を送って蒸発させることで体温低下につながります。

アイスパックによる頸部,腋窩部,鼠径部の局所冷却は素人では太い血管の上を正しく冷やすことは困難で,冷たいものに接触させると人は寒冷刺激に対応する体温調節反応が起こり,体温を上昇させると考えると理に適っています。

来年の夏からは,再考の必要があると思いました。一人の命も熱中症でなくなることが防げるように。

写真は会場の米子市文化ホール前のライトアップです。

こういうライトアップを見ると季節の移ろいを感じました。