伝統的木造住宅はどこにむかうか

松原です。
 13日(土)は,下記のシンポジウムに参加してきました。住宅の省エネルギー基準は,2020年に義務化をめざしており,そうなると真壁で建てる伝統木造工法にとっては厳しい,という問題です。すでに,10月9日の建築学会の「伝統的木造住宅の温熱環境と省エネルギー研究委員会」および11月18日の建築4団体共催の公開フォラムの事前要点整理のWEB会議の内容のおさらいなのですが,他の用務もあったので東京まで出向きました。おさらいとはいえ,この場であらためてお聞きする内容もありました。例えば,安藤邦廣先生は板倉工法の住宅の取り組みをしておられますが,鈴木成文先生のお宅や小泉八雲の住まいは窓の大きな庭のよく見える住宅であった。省エネルギー基準の義務化によって,温暖地の知恵がやりにくくなる可能性がある,という主旨の発言をされました。松井郁夫氏は,新築はなんとか対応が可能だが,改修の場合は対応が困難だろう,と発言されました。省エネルギー基準は「建物の基準であるべき」という国の立場と,「住まい手の対応でフォローできる部分も考慮すべきだ」という設計者・実務家の立場が,ぶつかり合っている印象を受けました。Q値やUA値は,客観的に計算できるものですが,法律や基準として定めるという社会での意志決定行為を行うに当たって,特例を認めるのか等々,難しい問題がたくさんあります。

 伝統的木造住宅はどこにむかうか−省エネルギーの基準義務化を見据えて−
 平成26年12月13日(土)13:30〜17:30
 総合司会 松留愼一郎(職業能力開発総合大学校教授)
 開会挨拶 吉野博(日本建築学会会長)
 主旨説明 中村勉(東京建築士会会長)
 基調講演 宿谷昌則(東京都市大学教授)「省エクセルギーは放調から」
 「伝統的木造住宅の省エネ・温熱調査報告」
      赤嶺嘉彦(国土交通省 国土技術政策総合研究所
      篠節子(篠計画工房)
 発表・パネルディスカッション(2時間)
パネラー
 鈴木大隆(北方建築総合研究所環境科学部長)「住宅省エネルギー基準の考え方」
 安藤邦廣(筑波大学名誉教授)「伝統的板倉構法の設計」
 松井郁夫(松井郁夫建築設計事務所)「伝統的「き」組の設計」
 綾部孝司(有限会社 綾部工務店)「伝統的土壁構法の設計施工」
 宿谷昌則(東京都市大学教授)、篠節子(篠計画工房)
モデレーター
 中村勉 (東京建築士会会長)

 まとめ 小玉祐一郎(神戸芸術工科大学教授)
 閉会挨拶 三井所清典(日本建築士会連合会会長)


 建築会館ホールが満席になる盛況で,非常に関心の高いテーマだと言えます。