正解のない問いかけ

松原です。
 先々週のある講義のコミュニケーションシートに,「就職活動を意識するようになって,答えのない問いに悩むようになりました。社会人になるということは,答えのない問いに自分なりの答えを見つけていくことのような気がします。」と書いた人がいました。
 この気づきは非常に意義のあることなので,次の授業の最初のコメントで紹介して,「みなさんは,センター試験の対策に典型的に見られるような『正解を早く知って覚える』ことを訓練したり,あるいは『便利なマニュアルを入手しないと不安になる』という面があるでしょうが,大学の学問とは,正解のない問いかけを考えることが圧倒的に多いのです。大学以後の人生には,マニュアルのないことが多いですよね。」という話をしました。これには,多くの学生が反応してくれて,翌週にも,このコメントの続きをしました。
 ある企業研修をしている会社のHPに,ゆとり世代の新入社員の特徴をまとめたものがあったので,この内容を紹介してみました。かなり反発するのではないか,と思っていたのですが,予想外に冷静に受け止めてくれました。このページの内容には同感する部分と,それは賛同できないという部分があるのですが,現状の分析としては,それなりの事実が含まれていると感じています。ただ,「育成方法」については,賛同できない部分が多いのです。そういう特徴があるから,こうやって扱えばよいのだ,というのではなく,現状を認識して自覚的にどのように前進するか,を考えてほしい,というのが教育者としての姿勢だと思うのです。
 同時に,重要な事実は,このような世代を世の中に送り出しているのは,大人社会なのだ,ということです。センター試験という制度をつくったのは国ですし,便利なマニュアル・指針をすぐに与えるのも周囲の大人ですし,教育的観点を十分にもった子育てができていたのか,という親が多いだろうからです。

 ゆとり世代」の新人の5つの特徴と求められる育成方法
 http://www.webinsource.com/archive/100405001321.htm

 一昨日の講義のコミュニケーションシートのある意見では,「これでは,『お前たちはそんなに立派だったのか! できていたのか!』と言いたくなるような気もします。」といいつつも,「このような意見も素直に聞くようにしたいです。何故なら,..私が何を求められているかわかるからです。」と結んでいます。また,別の人は「ゆとり世代と決めつけて接せずに,解決法を提示して相手に考えさせる,という先生の意見には感銘を受けました。結局,何事も本人次第ですよね。(一部,引用者,修正)」と書いてくれました。また,「自分に足りない部分をこうした結果でもって知り,受け止め,だから今後どうしたらいいのか,ということを考えるきっかけになったので,みてよかったと思う」という意見もありました。
 反発する意識をもたれてしまったら,意味が無いのですが,向上心につながった人が多い,と受け止めました。

 教育者としては,日々,何かを意識しながら,やり方に修正を加えながら仕事をしています。前回の世代間ギャップのブログは,この間のやりとりを意識したものです。
 
 植物園の入り口につながる道です。