帰ってきた「本」

松原です。
 先日のブログに,「行動理論史」という本が見あたらなくなったので復刻本を見つけて買いました,と書きましたが,なんと何年ぶりかで帰ってきました。「帰って」というのは,擬人化したみたいですが,戻ってきました,というより,帰ってきました,という気分です。
 先日,あるOBと会う機会があったのですが,「ブログ読んでくれてる?」と尋ねたところ,「はい。そう言えば,」とカバンを開けて取り出したのが,1980年3月発行の本でした(下の写真)。「おお,おお,よく帰って来たね。元気だったかい?」と思う,懐かしさでした。先日,復刻した本は3000円を越えていたのですが,帰ってきた本の裏表紙をみると1300円と書かれています。せっかく復刻本を買ったのですが,以前に呼んだことのある内容を真新しい本で読み進める気にはなかなかならないのが正直な気持ちです。帰って来た古い本をパラパラとめくると,ところどころに赤い線が引いてあり,書き込みもあります。自分で線を引いた部分を目で追うと,当時活動したであろう脳細胞の部位が活動を始めるような気がします。例えば,『右のようにスティーブンスは,操作主義の立場から,公共的客観的な操作による概念規定を通じて,最終的には物理学主義を心理学に導入することを提唱した。』という部分を読むと,建築環境工学にも関連する新精神物理学のスティーブンスさんは,こんな風に論評されていたのだ,と思い出します。わくわく,しますね。
 本人によると,「ブログをみて,この本,僕も借りて読んだなあ,と思って,ふと書棚をみると,そこにありました。すみません,すっかり返すのを忘れていました。面白かったという記憶があります。」と照れながら話してくれました。「君のおかげで,3000円の本を買わなければならなかったのだ。どうしてくれるんだ!」,という気もないわけではありませんが,それ以上に,ブログに書いたおかげで,本が帰って来てくれたことの方がうれしかったです。
 本人の名誉のために,当面,匿名にしておきます。研究室のみなさんも,借りたまま返していない本があれば,はやく返しましょうね。僕も,そういえば,借りたままの本があるのを思い出しました。早く返さねば。