関連する勉強,先行研究のレビュー

松原です。
 本日,帰りに北大路の駅の改札に向かっているときに,「松原先生!」と呼びとめられました。社会人2年目の修了生の宮田さんです。元気そうでなによりです。偶然ではありましたが,現在,査読中の論文への対応などの話をして,近いうちに研究室にも来てもらうことにしました。
 さて,本日の研究ゼミは3名の研究報告と8/6の打ち水の計画でした。最後に教員からゼミ生に伝えたいこととして,あらためて言語力,コミュニケーション力などのお話をしました(またか,ですが)。具体的な方法論の勉強を,教員はどんな具合にしていたか,をこの場に記しておきたいと思います。僕が修士の頃は,特に指導教員から「こんなテーマをしなさい」,ということはなく,院生がテーマを考えて相談にいくという方針でした(指導教員から呼び出されることはほとんどありませんでした)。なので,テーマや方法論なども,自分で発案するのが当然で,研究室の先輩や同室の助手の先生などの助言をもとに考えたものです。ある時には,非定常伝熱計算手法を学ぼうと,レスポンスファクター法などの一連の解説記事をいろいろとコピーして勉強しました。もちろん,建築学大系の前田先生の重み関数の理論は一応は学んでいたのですが。「Transport Phenomena(移動現象論)」は,先日お亡くなりになった新田勝通先生が助手の時代に,勉強会をしていただきました。また,あるときには、都市のヒートアイランド現象に関する英文誌の論文を集めて読んでいました。Myrupの一次元の熱収支モデル,あるいは三次元でのシミュレーションをしておられた木村竜二先生の論文なども拝読した記憶があります。もちろん,理解の程度は限られていましたが,関連研究の動向はある程度把握できました。しかし,これらの経験を経て,自分は物理ではなく人間の心理・生理を研究したいことが確認できました。ゼミのみなさんに伝えたいことは,ある分野の情報を得ようとした時には,先行研究といえる論文を10-20編はコピーしていたということです(当時は,学術雑誌や論文集の現物を図書館から借り出して,研究室あるいはコピー屋さんでコピーをして図書館に返却していました。僕は工学部に在籍していたのですが,幸い自転車で10分以内に,医学部,理学部,文学部,教養部,経済学部などの図書館があったので恵まれてはいました)。実際に読んだのは,そのうち4-5編にとどまっていたということも多いのですが,それなりに,熱い想いで勉強していましたし,その分野の動向をごく簡単に述べることをめざしていました(各論文のIntroductionを数編読めば,その分野のおよその現状は分かります)。また,それだけ読んだあとに,「このテーマはやめよう」と考えても,無駄なことをしたとは思いませんでした。また,雑誌の現物を見ていたために,当初の目的とは異なる「掘り出し物」の論文に出会うこともしばしばで,そんな文献が,今日役に立っている面もあります(検索してヒットする,という探し方ではありえないことです)。もう一つ伝えたいことは,環境工学の物理的な勉強をある程度した上で,心理生理の研究に入り込んで行ったことのメリットです。学会の議論でも,物理屋さんと心理屋さんの会話がまったくかみ合わないこともあるのですが(今年の建築学会でもあるかも...),僕の研究室の人には,体感温度,精神物理学,行動主義と認知主義などを横断する見識をめざして欲しいと思っています。心理学,生理学の勉強については,次回にします。

 京都駅ビルの吹き抜けで,烏丸中央改札を出たあたりです。先日の打ち水の下見の時の撮影です。