文献の収集(続き)

松原です。
 僕が大学時代に指導教員から言われたことは,「まず,関心のあるテーマに関連した最新の論文を見つけなさい。それを読むと,参考文献リストがあって,その文献を集めると,またそれぞれに参考文献リストがある。だから,ネズミ算式に論文が集まってしまうんだ。」というようなことでした。前回(4/15)紹介した論文は,それほど一貫性のあるものではありませんでしたが,約2000でした(全体を読んだものはその1/3〜1/4くらいか,もっと少ないだろうと思いますが)。僕の大学院時代は,雑誌本体をみて論文を探すことが多かったので,例えば「Ergonomics」という雑誌に関心のある論文があるようだ,と知ると,図書館に行ってその雑誌を5年〜10年分づつ閲覧室に持ち出し,目次を順に追っていきました。そこで,キーワードを選択的に絞って行くわけですが,つい気がそれて,かなり異なるテーマのものもコピーすることがありました(今日でも,です)。少なくともキーワード検索によって論文を探す方法では,絶対に出会うことのない論文を見つけることができました。このことは失敗でもあり,成功でもあり,と評価が分かれますが,僕自身は肯定的に考えています。現在の研究のスタンスも,意志決定に役立つ研究成果を追い求めることですので,ある程度の間口の広さが必要です。ミクロ〜マクロのスタンスをどこに定めるか,自分の哲学をもつことが重要なのです。現在の常識が,未来永劫正しいとは限りません。学問分野の常識が覆ることも少なくはないのです。既存の常識の中で,とにかく「上」「前」をめざす人が多いですが,「常識」を批判的に見ることも,それ以上に重要です。見方を変えると「上」か「下」か,「前」か「後ろ」かの評価基準があいまいなものであると気づくこともあります。常識を疑う思考訓練は大事にしてほしいと思っています。「もし.....だったら,.....なのではないか?」という文章を何種類も作ってみるということです。


「写真の解説」
 1号館3F廊下に各種の図書をおいた書架があります。環境・情報科学科の先生方が,学生に読書を促すために持ち寄ったのだと聞いています。府大の教育にはそんな手作りの雰囲気があります。