デザインと技術

松原です。
 環境デザイン学科の教員としては,「デザイン」という言葉には敏感ですし,学科の中では技術に近い側の教員なので,先日の新聞記事「ダイソン 羽無し扇風機」(3/30 朝日)の記事は面白く読みました。2009年に羽の無い扇風機を発売したダイソン社(イギリス)は,サイクロン掃除機で有名な会社です。学科の演習室にもこの掃除機がおいてあります。この記事では,Q&Aで,洗練されたデザインですね,という質問に対して,ダイソンにはデザイン専門のデザイナーはいなくて,エンジニアが機能を突き詰めた結果が製品の形になっている,とのことです。家電製品はプロダクトデザインの領域になりますので,建築よりも,もっとエンジニアの力が強いとは思っていましたが,これにはさすがに驚きました。建築・住宅の世界では,いわゆるデザイナーの力は非常に大きくて,技術者が造形の意志決定に関与する程度は,まだまだ小さいのです。但し「機能を突き詰めた結果が製品の形」を実現するためには,エンジニア教育の中に,デザイン教育的なものを含める必要があることを意味していると思います。R.バンハムの本「環境としての建築」には,建築家に対して,技術者を表現する「極端主義者」という言葉が出てきます。ハッカーのように,技術でできることは何でもやってしまう,そういう人達が,建築デザインを大きく変えてきた,という内容に入っていく前段の表現です。この本は,訳本でもなかなか難解なので,むしろ英語の原書を読む方が理解しやすい人もいるくらいですが,どちらでもよいので,一読を勧めます。19世紀末以後の建築デザインの変化を,設備機器の発展と関連づけている面白い本ですので。

ダイソン 扇風機
http://www.dyson.co.jp/fans/browsetherange.aspx


「写真の解説」
 4/4の賀茂川べりです。平日の午後ですが,花見客が多くて観光地のような雰囲気でした。昨日の嵐でほとんど散ってしまったかも知れませんが。