デザインの原論としての建築環境工学

松原です。
 建築環境工学の授業では,熱抵抗や換気量などを計算することに重点を置きがちなので,先日は,デザイン実習の原論であることにかこつけて,大学時代の先輩との会話を紹介してみました。その話を受けて,こんな感想を書いた学生がいます。
 『先生「環境工学をもっと建築の造形に取り入れて変えていくべき」,先輩「いや,デザイナーに好き勝手,造らせておいて,我々環境工学者はそれを下支えするのに徹するべきだ」という考えの違いについて,僕自身は先生寄りの考えを持っているのですが,実際に造形に環境工学的な要素を積極的に取り入れていこうとすると,周りの人たちから反発を受けたりして,なかなかうまくいかないような気もしています。現実的には,先輩の言うようなやり方で,結局は落ち着いてしまうのかな,とも思いました。』
 これに対する僕のコメントは,「そういう考えは,少し遅れているのではないかな。そもそも好き勝手にデザインできるようになったのは,空調・照明などの設備技術が発達して以後だから,せいぜいここ数十年のことだし,昨今の情勢は,無駄なエネルギーは使わない方向にきていますよね」と伝えました。こういう見解が出されるというのは,まだまだ教員としての努力が不足していると痛感しています。機能・性能と切り離された「デザイン」なるものが存在すると信じ込んでいる学生が少なくないようです。1997年に建築雑誌の編集委員をしていた頃から大きく変化したと思っているのですが,まだまだ,かも知れません。


京都コンサートホールの内部の床です。解説を聞いていないのですが,一種の錯視図のようですね。平坦な床面なのですが,そうは見えないでしょう?