科学者の責務

松原です。
 今週は授業や会議がないので,仕事の遅れを取り戻すよい機会でもあります。もちろん,修士論文卒業論文が優先ですが,他にもいろいろとあります。本日は,黒光先生(鹿児島大学)が来訪してくれ,近況をお聞きすることができました。家庭科教員養成の課程に勤務しておられるのですが,教員志望者の動向,日頃のゼミで学生に対して思うこと等々,話は尽きませんでした。
 本日の朝日新聞「窓 論説委員室から」の記事は興味深い内容でした。米国スタンフォード大学で,ノーベル物理学賞を受賞(1998)したロバート・ラフリン教授が,2月に放射線の人体影響,原子力事故の講義をされたそうです。同じ大学の山本喜久教授のコラムで,科学から発した技術を見守ることが科学者の仕事の一部であると述べているそうです。興味深いのは,「国民が大学に期待するのは,大学発のベンチャーや大学ランキングでは決してなく,やはり広義の教育なのだ」という結びの言葉です。辻篤子論説委員は,それに続けて「ちょっと耳の痛い向きもあるのでは。」と書いています。少し分野が異なりますが,同じ大学教員として「広義の教育」が重要だという主旨には同感です。ベンチャーというのは企業活動ですから,大学の本来的な目標とは異なるのだろう,やはり大学教員は,科学者とはいえ研究所勤務の研究員とは異なっていて「教育」が主たる責務だとあらためて納得した次第です。
 2008年の国際心理学会議でドイツに出張したときの関空からフランクフルトへの飛行機で隣席のドイツ人(日本の大手企業の現地法人の方)とお話しをしていたとき,「ドイツは環境対策がうまくいっているように思うがどうしてなのか?」と尋ねたところ,「ドイツでは,立法をする人(law maker),新聞社,企業などがそれぞれの役割をきちんと果たしているからだ。」と言われました。そういわれて,なるほどと思いました。大学教員には,官庁や企業人とは異なる役割がある,ということでしょう。それは,広義の教育であり,学術的な立場からの研究だろうと思います。


  写真の解説
 バイオマス燃料として話題のペレットを使うペレットストーブが,合同講義棟の1階に導入されました。森林サークルの「森なかま」のみなさんが大学の助成を受けて設置をしたようです。これも環境教育の一環になるのだろうと思います。